坂木司『肉小説集』を読んだ感想

最近は寒い日が続きますね。おかげで休日は外に出るのが億劫になりますね。まあ、そんな時こそ自宅で読書をするのがいいかなと思います。というわけで

今回紹介する作品は坂木司さんの『肉小説集』です。肉屋などで見かける豚の部位図のような可愛らしい表紙に惹かれて購入しました。肉にちなんだ6つの短編小説集となっています。

読んだ感想

短編小説集なのでどれもすぐに読み終わる文量となっています。6つの小説の中で私が気に入ったのは、アメリカ人の王様と肩の荷(+9)です。アメリカ人の王様は女性と結婚し、その女性の父親とトンカツ屋に食べに行く話です。義父との価値観や考えの違いに、これからやっていけるのか、少なくとも盆と正月には会わなければいけないという不安。互いの価値観や考えの違いをどうやって乗り越えていくかということをテーマにした作品で、最後に義父と主人公が互いの考えや価値観の違いを見事に乗り越えて、仲良くなるハートウォ―ミングな話です。タイトルのアメリカ人の王様とはそういう意味だったのかと最後まで読むことで納得できます。

肩の荷(+9)は、会社員で家庭を持つ男性の話。入社以来面倒を見てくれた上司が退職し、今度は自分が上司となって部下の面倒を見ることになるが、すぐに怒ってしまったりと中々うまくいかない。歯にものが詰まるようになり、老化も気になり始め、男は自信を無くす。上司が退職してから肩の荷が重い。そんな話で、私はまだ若いですが男性が抱く会社での人間関係や家族に関する悩みなど、共感できる部分が多かったです。この人は不器用だけど誠実でいい人なんだろうなあということが伝わってきます。最後には色々とあって吹っ切れたのが良かったです。心配していた家族との関係も上手くいって良かった。

他にも魚のヒレとほんの一部はそこはかとないエロさを感じる話でした。君の好きなバラでは男子中学生の見ている世界はこんな感じだよなぁとかつての自分を思い出しながら読んでいました。

肉小説集とある通り、各話には肉料理が出てきますが、それが絶望的においしそうではない。おいしそうな肉料理が出てくるかと思って読んだら期待を裏切られました。どの話でも世代の違う男が主人公なのですが、彼らは皆曲者で、どこか面倒くさい人達。彼らの複雑な心情を表すように、肉料理の描写はどこか食欲が湧かないようなものになっている。普通に食べるとおいしそうな料理ばかりなんですけどね。しかし、どこか癖のある男たちも、その先にはちゃんといい面も存在し、人っていうのはそんな単純なものではなく、悪い面もあればいい面もある、それが人間なんだと思わせる作品ばかりです。主人公の考えに共感できない部分もあるけど、それを含めてどこか愛おしい。そんな温かみのある短編集です。どの話も短くてサクサクと読み進めることができるので興味がある人は手に取ってみてはいかがでしょうか?

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森羅と木漏れ日の図書館1
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