皆さんお久しぶりです。森羅です。もう11月も終わりですね。いやー早かったような長かったような。12月に入るともう今年も終わってしまうのか・・・と何やら寂しくなりますねぇ。今年はどんな年だったかな~とか色々と考え始める時期です。
さて、皆さんは一番最初に読んだ本を覚えていますか? 一番最初というのは自分が本を自発的に読むようになってから最初に買ったりして読んだ本のことです。私の場合はハヤカワ文庫FTの『エラントリス―鎖された都の物語―』でした。作者はブランドン・アンダースンという方で岩原朋子さんが訳しています。この本は私が中学2年の春休みに買ったもので正確には最初に読んだ本では無いのかもしれませんが、自分の意志で初めて買って読んだ本ですのでとても思い入れがあります。内容は当時中学生だった私には難しかったのですが今読み返してみるととても面白い本でした。
世界観に慣れるまでは色々と読みづらい部分もあるのですが理解してくると一気に内容が入ってきます。とてもサラッと読むことはできないですがとても読み応えのある本ですので紹介したいと思います。
作品の概要
アレロン王国の近くに存在する都市、エラントリス。そこはかつて神々の都市と呼ばれ、美しく、力と光輝と魔法がみなぎっていた。そして、それはエラントリスだけではない。エラントリスに住まう住人も素晴らしかった。髪は白色で美しく、肌は純粋な銀色をしていた。そして手を一振りするだけで魔法が使えた。そのため病気を治す力や食べ物や知恵にあずかろうと、オペロン大陸中から人々が訪れた。エラントリスの住人は神のような存在だった。しかし、その栄光も今では過去のもの。十年前に起こったあるできごとによって。
今ではエラントリスは鎖され、人々からは災いの地として避けられるようになった。そして、エラントリス人になるための変化が起こったものは、心臓が止まり、一度ついた傷や痛みは治ることのない呪われた体になってしまう。そうなったものは例え王族だろうと乞食だろうと身分に関係なく、荒廃したエラントリスの内部へと連れて行かれ、そこで暮らしていくことを余儀なくされる。
この作品の主人公であるラオデンはエラントリスの近くに位置するアレロン王国の王子で朝目覚めると、エラントリス人になるための変化がおきていて上記のように呪われた生ける屍のような体になってしまっていました。エラントリス人は元々、夜寝ている間に変化が起きたことで美しい容姿や魔法の力を手にした人たちで、本来ならば変化がおきれば上記のように美しい力や魔法の力を習得できるはずですが、十年前からその変化は歪なものに変わってしまっている。そして、テオドの王女サレーネとの結婚を前にエラントリスへと連れて行かれます。そこでラオデンが目にしたものは、荒廃しきったエラントリスの姿と、理性や精神が失われ、狂暴化したエラントリス人が跋扈する秩序を失った世界。そこでラオデンは正気を失わないでいるエラントリス人、ガラドンと出会う。ガラドンに色々と教えてもらいながらも、ラオデンはエラントリスに秩序と平和、そして人々がかつてのように豊かに暮らしていける方法を模索し始める。
この作品には他にもメインとなるキャラクターが二人います。ラオデンと政略結婚することになり、アレロンへとやってきたテオドの王女サレーネ、三か月でアレロン王国全土をデレス教に改宗させるという使命をもってフィヨルデンからやってきた大主教ホラゼン。ストーリーはこの三者の視点から構成されています。
三者とも目的や考え方が違っていて読んでいてこれからどう話が繋がっていくんだろうというワクワク感をもって読めました。しかし、サレーネの視点での話は、主に王宮内部での生活が主で、アレロンの貴族達の事情や、王宮内部で蠢く陰謀、国政の話など政治色の強いので当時中学生の私には難しいところがありました。今読んでみると、持ち前の聡明さで彼女なりにドロドロとした政治や貴族社会の中で戦っていることがわかって面白いですけどね。
この作品の魅力
この作品の魅力は、三者が織りなす物語でしょう。上記にも書いたようにサレーネの場合は王宮内の生活や政治的な話、ラオデンは荒廃したエラントリスの再生や統治、ホラゼンは布教活動とそれぞれテーマが違います。一見バラバラに見える三者の物語ですがそれが後半では緻密に計算されていたのかのように鎖された都、エラントリスに関わってきます。そして、数々の伏線が綺麗に繋がって回収されていく様子はとても爽快です。
そして三者の視点で描かれるストーリーがどれも密度が濃くて純粋に面白いです。特にラオデンの視点で描かれるエラントリス内部の話は個人的にとても面白かったです。敵対する組織、重大な食糧不足、不足する物資、失われた魔法の研究etc・・・・。解決すべき課題が多くて、それをどうやって解決するのか楽しみに読むことができました。
それと、この作品にはアオン文字というものが存在します。本書の最初に一覧がありますがそのアオン文字が含まれる固有名詞や人名が多数登場します。アオン文字にはそれぞれ意味があり、人名に使われているアオン文字の意味とその人の人柄を照らし合わせて考えてみたりと変わった楽しみ方もできます。そういうところもいいと思います。
最後に
どうでしたか。『エラントリス―鎖された都の物語』は上下巻の二冊で1000ページ以上ありますが、内容が濃く、ハマる人にはハマる作品だと思います。私は大主教のホラゼンが好きでした。どちらかというと敵サイドの人なのですが最後には男気あふれるいいところを見せてくれますし、一本筋の通った男という感じで応援したくなりました。まあデレス教自体は読んでいる限り邪教っぽい感じがしますが。
興味の湧いた方は是非とも読んでみて下さい。それでは。