皆さんお久しぶりです。12月になって仕事でも、プライベートでも忙しくなってきました。仕事では忘年会の準備であったあり、プライベートでは年越しのために部屋を家中を掃除したりと大忙しです。今年ももう後二週間と少ししかありません。今年中にやるべきことはなるべく済ましておきたいですね。
さて、皆さんは変わった世界観の小説を読んだことはありますか? まあ、変わった世界観といっても色々とあると思いますが。例えば人間と妖怪が共存している世界だったり、人間が全くおらず、得体のしれない生物が闊歩しているような世界だったりとか、世界観が現実と全く違う話というのは本に限らず漫画でも映画でも、興味が湧いてくるものだと思います。受け入れることができるかどうかは別の話ですが・・・。
特にライトノベルというのは現実の世界とは全く違った世界観で描かれていることが多く、多種多様な世界が広がっています。その中でも私が読んだ中で特に変わってるな~と思ったのは、友野詳さんの『トライ・クロス』という作品です。この作品では魚がなんと、宙を浮いて自由に泳ぎ回っているのです。そして主人公であるウィル・クルアッハの武器は硬直のまじないをかけた魚介類。そんな一風変わった世界観の小説を今回は紹介したいと思います。
1.概要
まず、この作品の作者である友野詳さんは『トライ・クロス!』の他にも『コクーンワールド』や『ルナルサーガ』など数多くのファンタジー小説を執筆している方です。グループSNEに所属していてゲームデザイナーとしても活躍されています。
そして、『トライ・クロス!』は『トライ・クロス! 神は南より還る』『トライ・クロス! 魔は北より降る』『トライ・クロス!人は真央に屹(た)つ』の全三巻となっています。
2.あらすじ
<神は南より還る>
魚やイルカが空中を自由に泳ぎ回る魔法の都、トウクリクラ。泥虫街で身寄りのない子供たちと暮らす、自称小悪党のウィル・クルアッハは裏通りを仕切る幇(クラン)、ランパンとの諍いをきっかけにバーラト人の巨漢、ドラダ・シャク・トゥーガと体中に強大な力を持つ魔紋を刻まれたドルー族の少女フィリーア、そして一日に一人は殺す男、〝剣鬼〟ペルーンと出会う。訳あってそのままフィリーアを泥虫街のスラムへと匿うことに。最初は戸惑うフィリーアだったが身寄りのない子供たちと生活を共にし、何とか慣れてきたその矢先、ウィルとトゥーガが出かけている隙にフィリーアとスラムの中で最年少のゾナエが攫われてしまう。戻ってきたウィルとトゥーガはフィリーアを助け出すためにトウクリクラの街を奔走する。
一方、攫われたフィリーアが目覚めたのは暗い地の底だった。彼女の周りには見るも恐ろしい半人半蛇の群れ。その中に一人、黒いローブを纏った男の姿。三つの海と三つの大地が出会う場所トウクリクラの地下で今、世にも恐ろしい儀式が始まろうとしていた。
<魔は北より降る>
姿を消したスラムの仲間であるゾナエの行方を捜す途中、またしてもいざこざに巻き込まれるウィル。バラ、ユリ、ランなどの美しい花の力を体内に宿した八人の美女――黒の華園(ダーク・ガーデン)が次々とウィルに襲い掛かかる。そして暴走するフィリーアの魔紋。さらに兇将軍率いる新兵士(ミルミドン)もウィルの前に立ちはだかる。様々な勢力と陰謀から果たしてウィルはフィリーアを守ることができるのか!?そして攫われたゾナエを無事探し出せるのか!?
<神は真央に屹つ>
魔法の都トウクリクラ。そこに突如として現れた伝説の怪物――クラーケン。時を同じくして、都での様々な騒動の首謀者に仕立て上げられたウィルの前に祭儀省の闇楽師集団、五声(ウーシェン)が立ち塞がる。そして帝国を裏で統治する<八烈旗>の位階第一位<天>の座に位置する男、エリ・アザール・リンクトバルトスが遂に動き出す。アザールとウィルの間には並々ならぬ因縁が。再び崩壊の危機を迎える帝国。泥虫街のウィルは自身の過去に決着をつけるため、アザールの元へと向う。そしてバーラト連藩国の王子トゥーガと剣鬼ペルーンもそれぞれの目的を果たすために動き出す。三人の男の運命と帝国の未来を賭けた最終決戦が始まる!!
3.世界観
この作品の舞台となる魔法の都、トウクリクラでは海から陸に帰還した海底人(オアンネス)の凄まじく強力で強大な魔法儀式により海棲生物が空中を泳ぐことを可能にした一千年の歴史をもつ巨大都市です。街にはイルカやシャチが空中を自由に泳ぎ回り、魚輿と呼ばれるタクシーのようなものが走り回っています。
そして帝都トウクリクラには大小さまざまな幇(クラン)が無数に存在しています。幇(クラン)とは帝都の真っ当な商売から闇の世界までを支配している非合法の組織で同郷人や同種族の相互扶助に端を発するものから、区画の自警団や商売上の同業組合から発展したもの。さらには盗賊団や暗殺教団、滅ぼされた国の再興を願う残党や邪神を崇める結社など、そういうものを全てひっくるめて幇(クラン)と呼ばれています。
そして、帝国には白獣族(トロル)や狐人(クズハ)、牛人(モロク)など様々な種族がいます。それぞれの種族にはそれぞれ崇拝している神が存在しており、それらがストーリーに深くかかわってきます。
4.この作品の魅力
この作品の魅力といえば、疾走感のあるストーリー展開でしょう。物語の展開が早く、スピーディに話が展開していく様は読んでいて非常に気持ちがいいです。そして事態が二転三転していくので最後まで目が離せないので一気に読めてしまいます。また、魚が空中を泳ぎ回る都市という一見すると色物な感じがしますが、トウクリクラという都市の歴史や現在に至るまでの背景、そこに住まう様々な種族のしきたりや風習などが事細かに描かれており、平凡な日常の中に渦巻く様々な陰謀や組織の野望に巻き込まれる形で戦っていくという話としては王道を行く形となっています。
そして、ウィルの硬直のまじないをかけた魚――ナマモノ――と自身の知恵と身体能力を駆使して戦う戦闘は非常に面白いです。ライトノベルによくある主人公特有の能力とか強さではなくて、頭脳を使った駆け引きや様々な道具を駆使して戦うのが良いですね。まさに小悪党って感じがします。
また、ストーリーの所々で挟まれるギャグもいい味を出しています。主人公の性格も明るく前向きで、どんなことがあっても落ち込まず、相棒のトゥーガとの掛け合いも軽妙で、シリアスな場面でもあまり暗くなりすぎないのも良かったです。
最後に
どうでしたか。『トライ・クロス!』は2003年から2004年の間にかけて出版された本で全3巻となっています。3巻の後書きで第二部を書く前にいくつか書かないといけない作品があるということを仰られていたのですが・・・。あれから10年以上の歳月が経っています。続編がこれから出るのか、もう出ないのかは定かではないですが、できれば続きを読みたいものですね。
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それでは。