暇つぶしに消閑の挑戦者について語る。

どうも、森羅です。部屋の掃除が中々進みません。掃除の際に昔使っていた机の引き出しを開けるとそこには昔読んでいた本がずらりと並んでいました。見事にライトノベルばっかりです(笑)。何度も言ってますが中学の頃は本当にそういうのばかり読んでましたね。今はライトノベルより、普通の小説を読むほうが面白く感じられるようになりましたけど。

さて、本当はそんなに暇じゃあないんですけどね。暇つぶしに今回は『消閑の挑戦者』という作品について勝手に語るとしましょう。その前に、暇じゃないのにどうして暇つぶしなのかと言うと、消閑という言葉の意味が暇つぶしという意味だからです。そう、本のタイトルとかけているのですよ。

消閑という言葉は日常生活では全く使われていないし、私もこの本を見て初めてこんな熟語があるということを知りました。こんな熟語がタイトルに入ってる本なんて恐らくこの本だけなんじゃないかという程珍しい。まあ、探せば他にもあるのかもしれないけど。

余談はそのくらいにして、早速語っていこう。

この本の作者はあのムシウタの作者である岩井恭平さんのデビュー作である。そして3巻まである。サブタイトルはそれぞれ一巻からパーフェクト・キング、永遠と変化の小箱、ロスト・エリュシオンとなっている。どれも心躍るタイトルである。

それでは、一巻から順を追って語ろう。

パーフェクト・キング

記念すべき第一作目は何と、天才による、天才たちのための命がけのゲームである。天才少年、果須田裕斗が主催する究極のバトルゲーム、ルール・オブ・ザ・ルールにひょんなことから参加することになった鈴藤小槙(すずふじこまき)は同級生で同じくゲームの参加者である春野詳(はるのさち)とパートナーを組むことに。世界中の名立たる天才が2人1組でパートナーを組み挑むこのゲームを心待ちにしているものは数多くいた。世界中でゲームの様子が配信され、人々が見守る中、いざ蓋を開けてみるとそれは防御人(ディフェンダー)と呼ばれる殺人集団を撃退しつつ制限時間以内に困難なイベントをクリアしなくてはならない狂気のゲームだった。これは人類の王である果須田裕斗から天才達に向けての挑戦状である。

主人公は鈴藤小槙と春野詳の二人。鈴藤小槙は関西弁を話す美少女である。頭の回転が非常に早いく頭が良い。しかし、回転が早すぎて思考が空回りしてしまい学校での成績は学年でも最下位。また、おっとりしていて普段から何を考えているか分からないためクラスメートからは距離を置かれている。

一方春野詳の方は活発で人付き合いがよく、成績も学年でトップである。学校でいつも独りでいる小槙のことが気になっているのか、彼女のことをよくからかう。鈴藤小槙にとっては同級生で関わりのある数少ない人物である。

さて、命がけのゲームに参加することになった二人だが、この二人もただの一般人ではない。二人とも超飛躍(ウルトラジャンプ)という特殊能力を持っている。鈴藤小槙の場合は脳の演算能力を向上させ、あらゆる問題に答えを出すことができ、春野詳は物事を突破するための順路が見えるというもの。ただし春野詳は自分の意志で超飛躍することはできない。

そして、本筋に入る前に肝心のゲームの内容も補足しておこう。果須田裕斗が開催するゲーム、『ルール・オブ・ザ・ルール』は潮天市(しおあまし)全体を使ったアトラクションゲームである。そして、各ゲームの開始前に三名のプレイヤーが選ばれ、その三人はそのゲームのルールに対して一人一つずつ新たなルールを付け加えることができる。自分だけが有利になるものでもいいし、プレイヤーに不利な条件を強いるものでもいい。ゲームの開始以前から天才達の駆け引きは始まっているのだ。そして、プレイヤーにはリング状の端末が渡されている。この端末はゲームの進行に必要不可欠なものだ。そして、防御人を倒すとプログラムが手に入る。手に入れたプログラムを端末から選び使用すると様々な効果を発揮する。このプログラムを駆使していくこともゲームクリアには必要不可欠となる。

そして、ゲームオーバーの条件は防御人に殺されるか、自身の端末を破壊されるか、所持しているプログラムを全て失うかのいずれかである。また、端末に向かってギブアップと宣言すればいつでもゲームから降りることができる。

ここまで書いたが非常に面白そうなゲームだと私は思う。命がけではあるが殺伐としたデスゲームというわけではなく、プレイヤー側が有利となる条件がきちんと用意されていたりと公平である。まあ、殺しがメインではないから当然ではあるが。命がけでなければ是非とも私も参加したいと思う。

さて、ようやくだが本題に入ろう。春野詳はゲームに参加する予定だったのだが、当日になってゲームの参加にはパートナーが必要ということを知り焦る。さらに、ゲームの参加に必要なエントリーリングの入ったバッグを街中のオープンカフェに忘れてしまうという失態を犯す。気づいてから急いで戻るとそこには同級生の鈴藤小槙がいた。小槙と会話を交わした後、急いでパートナーを探し求める詳。しかしパートナーは一向に見つからず、ゲーム開始まで残り五分前となってしまった。途方にくれた詳はおもむろに端末を起動するとそこにはつい先ほど会話した鈴藤小槙の名前があった。小槙は詳がいない間にバッグの中の端末に触れてしまい、詳のパートナーとして登録されてしまっていたのだ。

普通参加する前に確かめておけよって思うのですが、成績がいい割におっちょこちょいなのか。まあ、頭がいい=冷静とは限らないですしね。

画面に浮かぶ文字を見て愕然とする詳だがそんな矢先、ついに果須田裕斗が開催するゲーム、『ルール・オブ・ザ・ルール』が始まった。第一ゲームのクリア条件は二時間の間生き残ること。一見簡単そうだがそううまくいくものではない。前述した通り、このゲームは選ばれた三人によってルールの改定や追加ができるのだ。

三人によって追加されたルールは以下の通り。

  • パートナー同士は同時に動くことはできない。(ただし、3秒以内なら可能)
  • プレイヤーは互いのパートナーの動きを察知できない。(端末の追跡機能の凍結)
  • 必ず一人以上の防御人を倒さなくてはならない。

これはきつい。春野詳はこの時点で相当不利な状況に置かれたことになる。

まず、パートナーの居場所を知ることができないため迂闊に移動することができない。無闇に動き回れば移動制限のルールに引っ掛かり、即ゲームオーバーである。そして、防御人を必ず一人は倒さなければならない。パートナーである鈴藤小槙は運動神経が悪く、一人で身を守れるとは思えない。防御人にとっては格好の獲物である。つまり、春野詳にとって鈴藤小槙の存在は完全にお荷物である。

そして、ゲーム開始直後、端末のOSから早速危機を知らせる音声が流れる。どうやら鈴藤小槙が防御人に見つかったようである。しかもプログラム L・CHAINE(ラブ・チェイン)を使われ実行者より半径10メートル以上離れた場合即ゲームオーバーとなってしまう効果が発動しているらしい。いきなり絶体絶命のピンチに陥った二人。

同級生の危機を知った詳は偶然とはいえ危険なゲームに巻き込んでしまったことに後悔する。そしてギブアップを宣言しようとするがその時、再びOSから音声が流れる。今度は鈴藤小槙に他のプレイヤーが接近しているようである。急いで端末を確認するとそこには祇園寺新汰の名前が。詳はその苗字に見覚えがあり、前世期の遺産と謳われた大数学者、祇園寺連の関係者ではないかと推測する。そして、防御人はどうやらその人物が倒してしまったようである。とりあえず危機は去ったようである。しかも鈴藤小槙に危害を加えていないことから、友好的なプレイヤーだと判断できる。

しかし、今度は詳の身にプレイヤーが接近する。コードネームはノヴァ。細身で眼鏡をかけた女性だ。彼女も超飛躍の使い手であり物事のベクトルを見ることができる能力である。そのせいでこちらからの攻撃は全くあたらず、逆にノヴァからの攻撃は的確に詳の体にヒットする。さらに、追い打ちをかけるようにノヴァのパートナーから厄介なプログラムを立て続けに使われてしまう。完全に息があった二人のコンビネーションに詳は為す術もない。トラッププログラムにかかった詳は制限時間以内に問題に解答しなければ自身のプログラムを二つ破壊されてしまう。詳のプログラムは一つしかない。制限時間は三分。さらに目の前にはノヴァ。そしてプログラムにより30分の間相手に攻撃をすることができない。まさに絶体絶命である。

いやー、正直ここまで追い詰めてくるなんて他の作品でもそんなにないんじゃないかってくらいに追い詰めてきますね。一人にそこまでしなくても普通に勝てるはずなんですがねぇ。相当なドSですね。

問題の回答も思いつかない。ノヴァを倒す方法もない。もはやこれまでかとゲームオーバーを覚悟した時、OSから意外な音声が聞こえてきた。何とセカンドマスターである鈴藤小槙が問題に解答し、トラッププログラムの影響を解除したのだ。イヤホンから聞こえてくる声は相変わらずのんびりしているがこの状況においてはかなり安心できた。イヤホンから彼女の意志を聞き、迷いの無くなった詳に超飛躍が発動する。そして満身創痍ながらもこのノヴァを倒し、危機を脱する。

ただの足枷だと思っていた同級生が真の頼れるパートナーとなったことと、思いがけない幸運により、詳は第一ゲームをクリアすることに成功する。

これ以上内容を語ると長くなりすぎてしまうのでかいつまんで話をするが、その後も第二、第三ゲームとゲームは続いていく。春野達は天才的な数学者、祇園寺連の孫の新汰や天才作曲家の詩音間(しねま)チカ、ギャングに荷担していた過去があるが現在は警視庁のキャリアとなった安住蔵人(あずみくらんど)などと行動を共にする。

そして最後のゲームとなる第三ゲームで、果須田裕斗の真実へとたどり着く。果須田裕斗と対峙する鈴藤小槙、最強の防御人ゼロに挑む春野詳と祇園寺新汰。果たして彼らはゲームを攻略できるのか。

あまりネタバレしないように書いたがここまでで充分だろう。命がけのゲーム、プログラムを駆使した攻防や頭脳戦、天才達の思いや葛藤。この本にはこういった様々な魅力的なエッセンスが散りばめられた作品だったと思う。

人類のキングを名乗り、世界中の誰からもその実力を認められている天才、果須田裕斗が開いたゲーム、『ルール・オブ・ザ・ルール』を縦軸に、春野詳や鈴藤小槙や祇園寺新汰などの天才達の物語を横軸に据えて進んでいくストーリーは中々に面白かった。このシリーズは人類の進化というものをテーマにしており、1巻では天才とは何かといったことに焦点が当てられ、それをストイックに突き詰めていっている。

こういったある意味哲学的なテーマをライトノベルで取り上げるのは珍しいと私は思うし、独自性としっかりした中身のある作品だったと思う。岩井恭平氏の才能が十二分に発揮されているといってもいい。

この作品だけでアニメが12話くらい作れそうではあるが、未だにそういった話は聞かない。素材としても丁度いいと思うのだが。

さて、かなり長くなってしまった。本当は2巻、3巻についても語ろうと思っていたがそれはまた別の機会にするとしよう。

それでは、また。

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